アルバムタイトルを下から支える『JUNIOR WELLS’ CHICAGO BLUES BAND』の文字。「正真正銘これがシカゴのブルース・バンドだ」そう表明しているように見えます。真偽の程は分かりませんが “CHICAGO BLUES BAND” という襷をかけて名乗ったのは、このアルバムのジュニアが最初だと聞いたことがあります。それと若い頃はGangsterだった事もあるとか。
ボスはジュニア・ウェルズ。それに続くカシラは電熱線ギターのバディ・ガイ。ゼンマイ仕掛けのオモチャみたいなリズム隊はベースのジャック・マイヤーズとタイコのビリー・ウォレン。
そこいらの月並みなライヴ盤以上に “生” な音がパックされている、このアルバムに対する私の楽しみ方は “空想” です。
「ジュニアは歴史上この世に生まれていない事にして、このバンドのボスをジュニアから自分に置き換える」
多少 “のび太” 的発想だが “空想” だから問題はない。
そして今夜も私の脳内限定ライヴ・ショーの時間になる。
白い煙と喧騒が満ちる地下のラウンジ。舞台袖から現れたバンドの彼らが、それぞれの楽器を手に取る。後から続いた私も”A”のハーモニカを手にして身構える。
サードポジション、イントロなんか無しだ。
ジャ〜ン♪ スナッチバッ!アン ホォィ!
始まる、、骨と皮だけのリズム&ブルースが、
□□□ HARMONICA □□□
フォロワーらしき者が今も昔もほとんど見当たらない、その独自のハーモニカ・スタイルを確立したのがアルバム単位のデビューにあたる本作ではないでしょうか。
ジュニアが使う特徴的テクニックの一つに超せっかちタンギングがあります。「これはいったい何ビート?」と思うぐらいに、それはヒステリックに刻まれます。
その妙技(タンギング)を楽しめる曲をいくつか ↓↓↓
『Messin’ With The Kid』
最大のヒット・ナンバーなので複数回の録音がありますが、ここはヴァンガード版で。『シカゴ/ザ・ブルース/トゥデイ” 』等。
『Country Girl』
映像作品『シカゴ・ブルース』の同名サントラ盤(レッド・ライトニン)で。ヴァンガード録音にも同曲がありますが、そちらではないので注意。
『Chitlin Con Carne』
ケニー・バレル作の名インストゥルメンタルです。本作で。
活動時期によっては、あまりハーモニカを吹かない作品もありますが、このアルバムでは全体的に満遍なくハーモニカ・サウンドが楽しめます。何しろハーモニカが入っていない曲がありません。
遺された数多くの録音群をハーモニカ吹きの位置から眺めると、やはりこのアルバムが最高峰に当たると思います。
続く