MUDDY WATERS
#Hard Again 1977

THE ROLLING STONES のファンの方々には広く知られているだろう、そのバンド名が MUDDY WATERS の楽曲名に由来しているという有名なエピソード。

このエピソードを知るとファンならば当然、興味がわき、その由来の曲が聴きたくなります。

すると探さなければならないのは音源ですが、時代が昭和の最後半ぐらいまでならば、それはアナログ・レコードになります。

その選択肢は、ほぼ一つ。

そのエピソード曲ROLLIN’ STONEが収録されているLPレコード『THE BEST OF MUDDY WATERS』です。

しかし令和の現在、時代も変わり音楽を聞く形態も変化し続けレコードを手にする機会もほとんど無くなりました。

しかしファンが『ROLLIN’ STONE』を探し求めて聞くという作業。

この作業は THE ROLLING STONES のデビュー以来、約60年近くたった今でも現在進行形で全世界のあらゆる国、街で行われている事でしょう。

私自身も10代半ばぐらいから THE ROLLING STONES に夢中になり、それから高校卒業して間もない頃にこの『THE BEST OF MUDDY WATERS』を手にしたと記憶しています。

その頃に思いをはせて、忘却部分には多少色を付け、少し物語ります。

そのレコードを手に入れると、まずは目標外の収録曲たちは後回しにして、早速、レコード盤の上空に浮かべた針先を目標の『ROLLIN’ STONE』の曲頭まで運んで降ろします。

『JUMPING JACK FLASH』を初めて聞いた時と同じように背中にカミナリを落とされることを期待しながら、ジリジリと鳴るノイズのあと曲が始まり、、、ジッ〜と聞き耳をたてて、わずかに3分、すぐに聴きおわる。

結果、カミナリは落ちず背中は無事でした。

というかピンとこない、、というかピントがあわない。というか、この一連の流れで『ROLLIN’ STONE』を聴いて、イッパツでピントがあい、速攻でカミナリに撃たれ、感電して、感動して、シビれまくって、興奮状態で近くに座っていた妹を無理矢理に立たせて、肩をつかみ激しく揺らしながら

「やっぱりブルースだぜ!マディ最高っ!」

なんてみたいになる人の方が圧倒的少数派ではないでしょうか?

ピンとこない理由は簡単で、ただ聴いていて退屈だったからです。ではどうして退屈なのか?この答えもシンプルです。

ロックンロール・ミュージックにシビれている最中の青少年達にとって必要不可欠なアイテムである(必殺のリフ)や(センチメンタルなサビ) 『ROLLIN’ STONE』のどこを探しても全然まったく見当たらないからです。

もしくは見つけにくい。気づきにくい。

ここでまた浮上する疑問。

シビれるロックンロール・ミュージックとピンとこないブルース・ミュージックはいったいどういった仲なのか?

ロンドン・スタイルの白人不良青年たちと大西洋越しの黒人オジサンとの謎の関係性。

この二つをジョイントさせて噛みあっているギア部分にピントをあわせ、それと連動してガタガタとドライブするエンジンをも映し出し、あざやかに見せて、謎解きまで導いてくれる。

そう!ピンとくるブルース・ミュージック・アルバム ! !

それがすなわち本作『HARD AGAIN』だと思います。

もしブルース・ミュージックがピンとこなくて『HARD AGAIN』を未聴な方は、ぜひ無防備な背中をスピーカーの前に差し出して聴いてみてください。

カミナリに撃たれて

ロックン・ロールな頭をブルース仕様にカスタマイズ!

コイツはシビれる

□□□□ Har.⇒JAMES COTTON □□□□

SONNY BOY WILLIAMSON ( II ) の直伝とされる伝統の南部式ハーモニカが強力にドライブしながらアルバム全体に、まとわり付きます。

このアルバムの特性がよく出ているのは初期の THE ROLLING STONES にも録音がある『I WANT TO BE LOVED』だと思います。オリジナル版 (チェス・レコード録音) のハーモニカは LITTLE WALTER ですがこちらのJAMES COTTONバージョンの方がよりゴロゴロとローリングしまくってジャンプアップされています。そして何しろ前記した(必殺のリフ)と決してセンチメンタルではないが(サビ)らしきものがあり、マディのナンバーでは私が知る限り、おそらく唯一であろう(ブレイク)まであるのです。

この(ブレイク)という”一瞬の間“もロックンロールと同流の魔法。この“間”はついでに聞き手のハートもブレイクさせます。

とにかくズッーと間断無くハーモニカが鳴っていて、シンプルなのに手持ちのカードが多くあり、いつまでも飽きることがありません。

そう、いつまでも。

James Cotton is forever

続く